【小さな窓から】ツバメ、燕、つばくらめ

2017年9月1日

ツバメ、燕、つばくらめ

FUSAKO

以前は8月中旬を過ぎると、家の近くで子育てを終えた親ツバメと子ツバメたちが電線に止まり遠い旅へ出かける直前の集まりをしていた。こんな日はいつも青い空が広がり風もなく、不思議なことに天敵のカラスが1羽も飛んでいないのだった。

4月初めに聞きなれた鳴き声に気がついて見上げると、1羽のたくましい成鳥が電線に止まっていた。元気に帰って来たことを喜んでいるうちにペアになり巣作りを始めた。毎年我が家の玄関のモルタルの壁に巣を作った。順調にいった時は8月までの5か月間に、2度子育てをした。

観察していると、2週間かけて巣をつくり、1週間弱様子を見ながら乾かし、卵を生んで温め2週間くらいでひながかえる。そうして忙しい餌やりが続く。餌をもらうときには赤い口をいっぱいに開けてジャジャジャと大きな声でなく。時々親が慌てたのかせっかく捕まえてきた虫を巣の下に落としている。コロギスみたいなのも、トンボも落ちていた、もったいないので割りばしではさんで、ひなの顔の前でふってみたらパクッと食べた。巣が狭くなった頃強いひなから順番に外に出て羽を広げて飛ぶ練習を始める。

ツバメはよくおしゃべりをする鳥だ。そして人間のこともよく見ている。ある時は1羽のひなが巣の下の地面に落ちていた。ドアを開けた私の顔を見ると助けてと言っているみたいにジャジャと鳴く。そっと巣に戻したこともあった。きっと親は近くで見ていたに違いない。またツバメ同士でもよく会話をする。ある日の夕方、疲れた1羽のひなが巣に早々に帰ってきて休んでいる。そこにもう1羽が帰ってきてピピと鳴いて入る。3番目に帰ってきたのが「ピピ」と鳴くと、2羽が「ピピピピ」と強い調子で答えている。「入れてよ」「ダメダメ。狭いから」そんな風に聞こえた。何度か飛び回りながらお願いするのだけれど場所を空けてもらえずあきらめてどこかに飛んで行った、こんなことが二、三日あった後もう巣には戻らなくなった。夜暗くなったときに、葉に隠れるようにして細い枝に止まって眠っているひなを見つけた。

今日が旅立ちかなと空を見上げていると、勢ぞろいして電線に止まっていた数羽が見ている私の頭の上を急に何度も旋回したのだった。はじめは動きの意味がわからなかったが、親鳥が一人前に飛べるようになったひなたちを連れて、巣の回りや玄関口、私の頭の上を意図して飛び回っているのだとわかった。ちょっと感情移入のし過ぎかもしれないが、その時私には「ここで育ったのよ。覚えておきなさい。」そして「ありがとう。さようなら。」とあいさつをしてくれているように思えたのだった。しばらくして元の列に戻り、集まっていた一群と一緒に飛び立って行った。私はツバメの姿が見えなくなるまでずっと空を見上げていた。心の中で無事を祈りながら、また来年元気で帰って来てねと。

こんな風にツバメの一族と親しくしていたのだが、ここ数年は巣作りがうまくいかない。つがいになって巣を作り始めるのだが、少し丸い形が出来て来たとおもうと、バラバラと崩れ始める。下に落ちた泥の塊を調べると、原因は泥をつなぐ植物の繊維が弱く、少し引っ張るだけで切れてしまう。近くに生えている草を使っているのだが、強い雑草がなくなってしまったらしい。そういえば以前、一度だけ人間が捨てたらしい荷作り紐を材料にしていたことがあった。あのころから巣の材料は不足していたのかもしれない。古い巣も使える間は修理して使っていたのだけれど。ここはツバメたちにとって厳しい環境になってしまったようだ。

カラスよけに花の鉢を釣ったり、ツバメは入れてもカラスは狭くて入れないように竹の棒を立ててみたりと、いろいろ工夫をした跡だけが残っている。この辺りはダメになったけれどもっといいところが見つかって元気に飛び回っていてほしいと思う。